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-第2回 特集- : 日本映画史をDVDで振り返る

-第3回 特集- : 日本映画史をDVDで振り返る 第2回目「1958年」

 角川映画、松竹、東映、東宝、日活の5社の協力で贈る「日本映画DVDセレクション」。第2回は日本映画史をDVDで振り返る企画第1弾として、日本映画がもっとも華やかだった「1958年」特集を企画しました。

 1958年(昭和33年)は神武景気の反動で経済は落ち込みながらも、ナベ底景気と呼ばれた年。市場に1万円札が登場、街なかに8ミリカメラが溢れるなど、人びとの暮らしは活気に満ちていました。53年に登場した白黒テレビも普及し始め、この年、読売テレビとNHK教育テレビが開局、本格的なテレビ時代の幕開けを予感させます。

 とはいえ、庶民の娯楽の王様はまだまだ映画。映画観客動員は史上最高の11億2700万人を記録し、邦画公開本数も504本と、邦画バブルと言われる昨今、09年が448本だったことを考えると、この年が戦後日本映画黄金時代の頂点だったことが分かります。事実、それに見合うほど、様々なジャンルにおける傑作&秀作群が発表されています。

 嬉しいことに、この年に公開された作品の多くは各社からDVDが発売。作品によっては予告編やフォトギャラリー、復刻プレスシートや解説書が封入されているものもあります。それだけに、当時、映画館に足を運んだ世代はもちろん、初見の若い世代にとっても、世界に誇る当時の日本映画の素晴らしさをDVDで再確認することができるでしょう。そこで、今回はこの年を代表する作品をピックアップし、1958年の日本映画界を解説していきます。

昭和を代表するスター主演作品

花笠若衆

花笠若衆

 日本映画黄金時代を最も牽引したのはまぎれもなく時代劇でした。特に当時の東映と大映は、しのぎを削るように時代劇を量産。東映では中村錦之助や東千代之介、大映は市川雷蔵という稀代の若手二枚目スターを輩出したことで、女性ファンを中心にその人気もうなぎ昇り、その熱狂ぶりは凄まじいものがありました。『濡れ髪剣法』『弁天小僧』といったこの年の市川雷蔵主演作もその妖艶な美しさが際立っており、決して観る者の期待を裏切りません。

 また、東映では美空ひばり主演の時代劇も人気を博していました。この年は彼女の芸能生活10周年。歌って踊れて演技も殺陣もできる稀代の天才エンタティナーの活躍ぶりは、若手二枚目スター大川橋蔵と共演した『花笠若衆』などでも触れることができます。

嵐を呼ぶ男

嵐を呼ぶ男

炎上

炎上

 一方、54年に新生してまもなかった日活は、その初期こそ新国劇と組んで時代劇を製作していましたが、この時期になるとスターとして一気に躍り出た石原裕次郎主演の『嵐を呼ぶ男』『錆びたナイフ』といった不良性感度の高い娯楽青春アクション映画が主流になり、好評を博すように。

また、日活は巨匠・田坂具隆監督が石坂洋次郎原作の文芸映画超大作『陽のあたる坂道』の主演に裕次郎を起用し、 その年の興行第2位の大ヒットを記録(第1位は大映版『忠臣蔵』、第3位は裕次郎の航空アクション映画『紅の翼』)。また市川雷蔵も、市川崑監督、三島由紀夫原作『炎上』に主演し、その年のキネマ旬報男優賞を受賞しています。

文芸作品やミステリ映画の名作が続々登場

 1958年は文芸映画の名作も目立った年でもあります。松竹は木下惠介監督が深沢七郎原作の『楢山節考』を総天然色のオールセットで描出し、この年のキネマ旬報ベスト・テン第1位および女優賞(田中絹代)を獲得。この作品は長らくソフト化が認められなかったのですが、DVD時代の到来によってようやくリリースがかないました。

無法松の一生

駅前旅館

 小津安二郎監督の『彼岸花』も名匠の貫録を十二分に示しています。こちらは里見弴の原作で、田中絹代に山本富士子、有馬稲子、久我美子など豪華女優陣が競演。その中で描かれるのはやはり娘の結婚話ですが、ここでは父親のみならず母親からの視点も濃厚と、従来の小津作品とは違った趣が楽しめます。  そして東宝の『無法松の一生』。稲垣浩監督が戦時中に演出しながらも当時の軍部の検閲でカットを余儀なくされたことを不満に思い続け、それらのシーンを総天然色の映像で復活させた念願のセルフ・リメイク映画であるとともに、大スター三船敏郎の男気の魅力を遺憾なく発揮させた快作です。本作はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。その報せを受けた稲垣監督は滂沱の涙を流し喜んだそうです。

 一方、この年は松本清張ブームのあおりを受けてのミステリ映画の名作も目立ちました。その初期から清張原作の映画化に熱心だった松竹では、監督・野村芳太郎&脚本・橋本忍という時の若手(!)コンビで『張込み』を発表。容疑者の元恋人をひたすら張り込み続ける二人の刑事の地道な捜査を淡々と描き上げ、高く評価されています。また東映では小林恒夫監督のメガホンで『点と線』を映画化。驚くのは原作がかなりの長編であるのに対し、映画版は90分もないことで、そのタイトな脚本の引き締め方は今も長編小説を映画化する際の一つのお手本になるのではないでしょうか。以降、清張作品は前年の『』を含め35作品が映画化、09年には『ゼロの焦点』がリメイクされました。

故・森繁久彌さんの出演作を偲ぶ

駅前旅館

駅前旅館

 ミステリとくれば次はコメディ。東宝ではこの年、“駅前”シリーズの記念すべき第1作『駅前旅館』を発表しています。本作は“社長”シリーズに続く東宝の娯楽人気長寿シリーズとして69年までの11年間に24作品を発表。惜しくも先日、主演の森繁久彌が亡くなったばかりですが、名優の偉業を振り返るにも絶好のテキストとなるでしょう。

 ご存知の通り、当時の東宝は特撮映画でも絶大な人気を誇っていました。しかしこの年はいわゆる怪獣ものではない怪奇変身人間シリーズの一環として『美女と液体人間』が公開。ここにも特撮というジャンルのさらなる進化を目指すスタッフの意気込みなどが大いにうかがえます。その東宝に追いつけとばかりに特撮路線の開拓を目指していた大映は時代劇大作『日蓮と蒙古大襲来』の台風“神風”シーンなどで特撮をふんだんに使用(ここでの特撮の多くは79年の『日蓮』にも流用)。この経験を活かしつつ、後の特撮時代劇に才を発揮するようになります。

白蛇伝

白蛇伝

 また、この年は東映動画(現・東映アニメーション)が発足し、長編アニメーション映画第1作『白蛇伝』(こちらも声の主演は森繁久彌)を発表。そう、世界に誇る日本のアニメーションの輝かしい歴史はこの年から始まったのです。

 こうして振り返ると、芸術性の高いものから娯楽性に満ちたものまで、硬軟取り混ぜた豊富なジャンルと、それを裏打ちするに見合った傑作秀作群、そのバランスの良さがあってこその日本映画黄金時代であったことが理解できます。監督たちの顔ぶれも『隠し砦の三悪人』の黒澤明、『森と湖のまつり』の内田吐夢といったベテラン陣から、『巨人と玩具』の増村保造、『盗まれた欲情』の今村昌平などの新人まで実に幅広い。岡本喜八監督のデビューもこの年。そうした意味でも、この年の作品群は21世紀の今の日本映画界で黄金時代を再来させるための大きなヒントを与えてくれるのではないでしょうか。(文=増當竜也)

情報

キネマ旬報ベスト・テン
1.
楢山節考(木下惠介監督)
2.
隠し砦の三悪人(黒澤明監督)
3.
彼岸花(小津安二郎監督)
4.
炎上(市川崑監督)
5.
裸の太陽(家城巳代治監督)
6.
夜の鼓(今井正監督)
7.
無法松の一生(稲垣浩監督)
8.
張込み(野村芳太郎監督)
9.
裸の大将(堀川弘通監督)
10.
巨人と玩具(増村保造監督)
興行ベスト・テン(配収)
1.
忠臣蔵(大映) 4億1033万円
2.
陽のあたる坂道(日活) 4億0071万円
3.
紅の翼(日活) 3億6495万円
4.
忠臣蔵(東映) 3億6122万円
5.
隠し砦の三悪人(東宝) 3億4264万
6.
明日は明日の風が吹く(日活) 3億2150万円
7.
風速40米(日活) 3億1809万円
8.
日蓮と蒙古大襲来(大映) 3億0512万円
9.
人間の條件(松竹) 3億0404万円
10.
彼岸花(松竹) 2億9422万円
58年4月~59年3月公開作品のものが対象

関連作品紹介

嵐を呼ぶ男

メディア/品番:DVD DVN-32

発売日:2002.10.01

発売:日活/販売:ハピネット

税込価格:\3,990

本編尺:100分

カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ

音声:モノラル

■特典:劇場予告篇/解説書
駅前旅館

メディア/品番:DVD TDV15064D

発売日:2005.02.25

発売/販売:東宝

税込価格:\4,725

本編尺:109分

カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ

音声:モノラル

■特典:予告編/見どころ解説<林家こぶ平>

炎上

メディア/品番:DVD DABA-0114

発売日:2004.10.22

発売/販売:角川映画

税込価格:\4,935

収録時間:99分

カラー/画面サイズ:モノクロ/スコープ

音声:ドルビーデジタル/モノラル

■三島由紀夫の傑作「金閣寺」を名匠・市川崑が市川雷蔵を主演に映画化。映像特典:スタッフ・キャスト解説/フォトギャラリー、封入特典:解説書(24頁)。デジタルニューマスター使用、モノクロ作品
錆びたナイフ

メディア/品番:DVD DVN-34

発売日:2002.10.1

発売:日活/販売:ハピネット

税込価格:\3,990

本編尺:90分

カラー/画面サイズ:モノクロ/スコープ

音声:モノラル

■特典:フォトギャラリー/劇場予告篇/解説書

点と線

メディア/品番:DVD DSTD02275

発売日:2003.11.21

発売:東映ビデオ/販売:東映

税込価格:\4,725

収録時間:85分

カラー/画面サイズ:カラー/16:9LB(シネスコ)

音声:モノラル

■映像特典:フォトギャラリー/予告編
楢山節考

メディア/品番:DVD DA-0940

発売日:2006.06.24

発売/販売:松竹

税込価格:\3,990

本編尺:98分

カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ

音声:モノラル


濡れ髪剣法

メディア/品番:DVD DABA-0637

発売日:2009.10.23

発売/販売:角川映画

税込価格:\4,725

本編尺:89分

カラー/画面サイズ:モノクロ/スコープ

音声:ドルビーデジタル/モノラル

■市川雷蔵がコミカルな一面で魅せる明朗時代劇「濡れ髪」シリーズ第一弾。映像特典:スタッフ・キャスト紹介/フォトギャラリー。デジタルニューマスター使用、モノクロ作品
白蛇伝

メディア/品番:DVD DSTD02106

発売日:2002.7.21

発売:東映ビデオ/販売:東映

税込価格:\4,725

収録時間:79分

カラー/画面サイズ:カラー/スタンダード

音声:モノラル


花笠若衆

メディア/品番:DVD DSTD02378

発売日:2004.12.10

発売:東映ビデオ/販売:東映

税込価格:\4,725

収録時間:88分

カラー/画面サイズ:カラー/16:9LB(シネスコ)

音声:モノラル

■映像特典:フォトギャラリー/ポスターギャラリー/予告編
張込み

メディア/品番:DVD DA-0774

発売日:2005.11.26

発売/販売:松竹

税込価格:\3,990

本編尺:116分

カラー/画面サイズ:モノクロ/シネスコ

音声:モノラル

■特典:予告篇/シネマ紀行 

彼岸花

メディア/品番:DVD DA-0287

発売日:2005.08.27

発売/販売:松竹

税込価格:\3,990

本編尺:118分

カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ

音声:モノラル

■日本語字幕あり
美女と液体人間

メディア/品番:DVD TDV15058D

発売日:2005.02.25

発売/販売:東宝

税込価格:\4,725

本編尺:86分

カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ

音声:①モノラル②3.0ch③5.1chリミックス④オーディオコメンタリー

■特典:予告篇/スタッフが語る「美女と液体人間」、オーディオコメンタリー:佐原健二/解説書

陽のあたる坂道

メディア/品番:DVD DVN-59

発売日:2003.07.01

発売:日活/販売:ハピネット

税込価格:\4,935

本編尺:209分

カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダード

音声:モノラル

■特典:撮影スナップ/フォトギャラリー/解説書
弁天小僧

メディア/品番:DVD DABA-0113

発売日:2004.10.22

発売/販売:角川映画

税込価格:\4,935

本編尺(分):86分

カラー/画面サイズ:カラー/スコープ

音声:モノラル

■歌舞伎出身の市川雷蔵ならではの「知らざァ言ってきかせやしょう」は鮮やかな名場面!映像特典:予告編/フォトギャラリー/ブックレット(16頁)。デジタルニューマスター使用、カラー作品

無法松の一生

メディア/品番:DVD TDV2918D

発売日:2004.08.27

発売/販売:東宝

税込価格:\4,725

本編尺:108分

カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ

音声:モノラル

■特典:予告篇/解説書つき

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