角川映画、松竹、東映、東宝、日活――5社の協力で贈る「日本映画DVDセレクション」。第4回目は日本映画史をDVDで振り返る企画第3弾として、「1965年」を特集しました。前回同様、ここでご紹介している作品のほとんどは各社よりDVDが発売されています。名画座に足を運ばなければならなかった数年前とは異なり、手軽に日本映画史に残る数々の作品に触れることができるのは、やはりDVD環境が揃った今の時代の特権でしょう。この特集から当時の日本映画界の状況を知り、作品への興味を持っていただければ幸いです。

黒澤明監督の『赤ひげ』がキネマ旬報ベスト・ワンとなった1965年ですが、実は黒澤監督がベスト・ワンに輝いた作品は、この作品と52年の『生きる』のみ。リアルタイムでの国内の黒澤映画の評価は、ダイナミズムよりもヒューマニズムを尊ぶ傾向にあったようで、事実この年は日本と韓国の国交がようやく正常化する一方、ヴェトナム戦争におけるアメリカの北爆が開始、マルコムXが暗殺されています。国内では、富士山頂に世界でも類を見ない画期的な気象レーダーが設置され(この模様は石原プロが後に『富士山頂』として映画化。残念ながらDVD未発売)、朝永振一郎がノーベル物理学賞を受賞したかと思うと、初のスモッグ警報が出されたりと、社会的にも科学文明的にも真のヒューマニズムとは何かが問われる年でもあったようです。

また、山本薩夫監督の『にっぽん泥棒物語』や熊井啓監督の『日本列島』など、戦後のミステリアスな事件をモチーフにしながら、社会や政治の闇を突く作品も目立ってきます。『飢餓海峡』もその中の1本でしょう。山田洋次監督作品としては異質ともいえる社会派サスペンス映画『霧の旗』もこの年。無実の罪で獄死した兄の弁護を断った弁護士にヒロインが復讐する陰惨な物語でした。その原作者である社会派ミステリ小説の大家・松本清張ものも、この年に公開された作品には他に『けものみち』『花実のない森』があります。“戦後最大の誘拐事件”とも騒がれた吉展ちゃん事件の犯人が逮捕されたのもこの年ですが、吉展ちゃんはすでに帰らぬ人となっていました。
こうした社会的閉塞感に立ち向かうかのように、日本映画界では任侠やくざ映画が急速に台頭してきます。義理と人情で害悪と対峙するニヒリズムとヒロイズムが混じり合う侠客たちの雄姿は当時の学生たちの熱い支持を集め、いつしか彼らの政治運動の象徴ともなっていきます。その筆頭となったのは東映の高倉健で、64年に始まった『日本侠客伝』シリーズに続き、この年は『昭和残侠伝』『網走番外地』と彼の人気を決定付ける新たなシリーズがスタート。さらには『宮本武蔵 巌流島の決斗』『飢餓海峡』と内田吐夢監督作品に連続出演するなど、映画スターとして大いに飛躍した年だったと言えるでしょう。
ソ連宇宙飛行士による人類初の宇宙遊泳がなされたのもこの年ですが、それを受けてか日本でもちょっとした宇宙ブームとなり、『宇宙パトロールホッパ』『宇宙少年ソラン』『宇宙エース』など、やたら“宇宙”を冠にしたタイトルのTVアニメがこの年はオンエアされています。東映動画でも長編アニメ映画『ガリバーの宇宙旅行』を製作。ご存じゴジラも『怪獣大戦争』で何と月へ連れていかれてキングギドラと格闘します。
怪獣映画の流れでは、大映がガメラ・シリーズ第1作『大怪獣ガメラ』を発表。やがて日本中が66年の「ウルトラQ」「ウルトラマン」の大ヒットに至る第一次怪獣ブームへと突入していきます。また『宇宙大戦争』では、人類が科学と叡智をもって異星人ナタールの侵略を見事に退けました(もちろんフィクションです)。
64年の東京オリンピックの模様を収めたドキュメンタリー映画『東京オリンピック』も、市川崑総監督ならではの技巧を凝らしたシャープな演出によって「記録か芸術か」と日本中を騒然とさせる社会現象を巻き起こしました。オリンピックという華やかさがもたらした混乱の事象、これこそ社会の光と闇が絡み合う65年を象徴していたのかもしれません(なお、『東京オリンピック』DVDは劇場初公開版と、後に市川監督のたっての希望で自身が再編集したディレクターズ・カットの2ヴァージョンが収められているのがお楽しみです)。

芸術といえば、小林正樹監督の『怪談』がカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。これも闇の世界を魅惑的な色彩美で描ききることで世界の喝采=光を浴びた、不可思議な混沌の一例といえましょうか。

篠田正浩監督の『美しさと哀しみと』も耽美なタッチの中に愛と憎しみが混在していますが、だからこそ大庭秀雄監督作品『雪国』のようなオーソドックスな文芸映画に接すると、どこかほっとするものもあるのも事実でしょう。
日活の看板スター、石原裕次郎の登板は異色時代劇『城取り』と兄・石原慎太郎原作の『青春とはなんだ』くらいで、代わって『黒い賭博師』シリーズや『マカオの竜』など小林旭主演のアクション映画群が大きく気を吐き、続いて二谷英明や宍戸錠、さらには高橋英樹や渡哲也ら次世代若手スターがそれに続く図式と化してきました。その一方で、同社が配給した武智鉄二監督の『黒い雪』が猥褻容疑で警視庁に摘発されていますが、思えば非合法のブルーフィルムが裏社会に流通し始めたのも、大人のTV番組の原点ともいえる『11PM』が始まったのもこの年。その意味でも60年代の半ばとは、社会とエロスが徐々に接近していくとともにきしみあっていく黎明期だったのかもしれません。そしてこの6年後、日活はロマンポルノ路線へと大きく転換していくのです。(文=増當竜也)
メディア/品番:DVD DSTD 02061
発売日:2002.07.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:\4,725
収録時間:92分
カラー/画面サイズ:モノクロ/16:9LB(シネスコ)
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DA-0476
発売日:2004.12.23
発売/販売:松竹
税込価格:\3,990
収録時間:106分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV16206R
発売日:2005.06.24
発売/販売:東宝
税込価格:\4,725
本編尺:94分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:①モノラル ②オーディオコメンタリー
メディア/品番:DVD TDV2721D
発売日:2003.06.21
発売/販売:東宝
税込価格:\6,300
本編尺:本編182分+映像特典18分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD 02101
発売日:2002.07.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:\4,725
収録時間:183分
カラー/画面サイズ:モノクロ/16:9LB(シネスコ)
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DA-0665
発売日:2002.07.21
発売/販売:松竹
税込価格:\3,990
収録時間:111分
カラー/画面サイズ:モノクロ/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV15294D
発売日:2005.09.30
発売/販売:東宝
税込価格:\4,725
本編尺:107分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:①モノラル ②5.1ch(2001Remix) ③オーディオコメンタリー ④BGM&SONGトラック
メディア/品番:DVD DVN-87
発売日:2005.1.21
発売:日活/販売:ハピネット
税込価格:\2,940
本編尺:86分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0447
発売日:2008.1.25
発売/販売:角川映画
税込価格:¥3,990
本編尺:104分
カラー/画面サイズ:カラー/スコープサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD 02082
発売日:2002.07.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:\4,725
収録時間:91分
カラー/画面サイズ:カラー/16:9LB(シネスコ)
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DVN-170
発売日:2007.12.14
発売:日活/販売:ハピネット
税込価格:\4,935
本編尺:116分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0169/DABA-0170
発売日:2005.6.24
発売/販売:角川映画 ※単品も発売中
税込価格:各¥16,800
本編尺:上巻367分 下巻346分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スコープサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0668
発売日:2009.12.25
発売/販売:角川映画
税込価格:¥4,725
本編尺:86分
カラー/画面サイズ:カラー/スコープサイズ
音声:モノラル