
角川映画、松竹、東映、東宝、日活――5社の協力で贈る「日本映画DVDセレクション」。第7回目は日活より、日活ロマンポルノ第1作の白川和子主演作『団地妻 昼下りの情事』(西村昭五郎監督・71)と、「カナダからの手紙」で一世を風靡した畑中葉子の主演作『後から前から』(小原宏裕監督・80)をリメイクした、“ロマンポルノ・リターンズ”2作が5月28日、6月25日に発売されるのを記念し、“女優のエロス”に焦点を当てた特集を企画しました。
日活ロマンポルノは“脱ぐ”ことが大前提のジャンルでしたが、振り返れば一般作も――特に往年の文芸作品には濃厚なエロス描写が多く、名だたる女優が意欲的に臨んだ作品が少なくありません。昨今ではそんな濃厚シーンに挑む女優も少なくなってきただけに、日本映画史上に残る、美しい女優たちが魅せる旧作のDVDは貴重な存在でしょう。そこで今回は、『キネマ旬報』本誌で「カラダが目当て」を連載(残念ながら2010年2月上旬号にて終了)、『映画は“女優”で見る!―映画生活を楽しくするススメ』(近代映画社刊・SCREEN新書)を執筆された映画評論家・秋本鉄次さんに、“女優のエロス”で見る映画の醍醐味について書いていただきました。
「必然性があれば……」とは、女優が激しいからみ、大胆な脱ぎに挑む時の常套句として使われたが、最近はその“必然性”があっても、回避しがちな困った傾向にある。私はこれを“映画女優脱がない症候群”と呼んでいる。
ふた昔前なら、ひとたび映画の現場に入れば、あるいは巨匠・鬼才と呼ばれる監督に指導されれば、生半可な覚悟は許されない、すべてをさらけ出してこそ女優! という不文律があったはず。そんな、女優のエロス促進剤の一つに“文芸エロス”があった。名作文学の真髄に肉薄するためには、濃厚なエロス表現は不可避、不可欠なり。その金科玉条に、女優たちは大いに殉じたものである。
例えば、今や大物女優の黒木瞳は森田芳光監督作『失楽園』(97)が有名だが、同じ渡辺淳一原作なら、脱ぎもからみも東陽一監督作『化身』(86)のほうが格段に激しい。文芸評論家の愛人になるクラブ・ホステス役だが、当時は20代半ば。“爼の上の鯉”の心境だったのか、冒頭まもなくから露出度はかなりのもの。貸し切り状態の屋形船の酒席で、しずしずと後ろ向きに脱ぎ始める。微乳でも形良いバストがフルオープン。「キレイだよ」と褒められつつ、ねちっこく攻められる。その後も続く濡れ場で彼女はすべてをさらけ出している。そのからみのプロセスの具体的な描写は一種のスペクタクルだな、と感じた。

最近はCMでイヌと夫婦をやっている樋口可南子もかつては『北斎漫画』(新藤兼人監督・81)など大胆さではならしたもの。谷崎潤一郎原作の『卍』(横山博人監督・83)では、豊満な片瀬春奈との同性愛シーンで、対照的にスレンダーボディーと控えめな乳房が逆に挑発的に強調され、異彩を放っていた。

豊満ボディーといえば歌手の小柳ルミ子が“女優開眼”と呼ばれたのが、水上勉原作の『白蛇抄』(伊藤俊也監督・83)だった。白蛇の化身のような肉体を義理の息子に与える激しい濡れ場は、貪婪とも言える小柳の裸身が画面を圧していた。

女体の美しさを際立たせる趣向として“刺青もの”がある。谷崎の「刺青」は何度も映画化されているが、赤江瀑原作の『雪華葬刺し』(高林陽一監督・82)は性交中の火照った肌に針を入れる設定が斬新だった。異端の刺青師に墨を入れられてゆく図書館勤めの女を演じた宇津宮雅代もきめ濃やかな肌とほどよい肉付きの持ち主で、全身に見事に彫られた刺青は見惚れるほど。
今や大ベテラン女優、若尾文子、池内淳子、山本富士子も若き日にエロチックな姿態を見せつけている。若尾は谷崎原作の『瘋癲老人日記』(木村恵吾監督・62)で、齢70を過ぎ、すでに不能でも性的欲求は豊富な義父に自分の肉体を弄ばせ、少しずつ老人に貢がせる嫁を蠱惑的に演じた。本作などで清純派からの完全脱皮を遂げた彼女は、以後“ただごとでは済まない”官能的肉体の持ち主となり、世の男性を魅了した。
一方、池内はもともと仇っぽい役柄が多かったが、松本清張原作の『けものみち』(須川栄監督・65)では、不幸な境遇から逃れるため、寝たきりの夫を殺し、さらには右翼の大物の愛人にまでなってふてぶてしく生きようとする“悪女”を熱演し、映画における彼女の代表作ともなった。

山本は、ミス日本の美貌を生かし人気女優になったが、上品な役だけでなく、いわゆる玄人女性もよく演じた。永井荷風原作の『濹東綺譚』(豊田四郎監督・60)での玉の井の娼婦お雪役は、三流の私娼窟の女としては“美しすぎる”との批判も浴びたが、それでも男のパラダイス幻想には十分寄与する“美しすぎる肉体”であった。
美しすぎる肉体、と言えば、テレビの「水戸黄門」でお約束の入浴シーンを演じ続けた由美かおるは、約40年間プロポーションが不変だそうだが、若き日の『同棲時代 今日子と次郎』(山根成之監督・73)『しなの川』(野村芳太郎監督・73)での脱ぎっぷりの良さ、裸身の美しさを検証し、再確認するに値する。

さて、女優が脱ぐ、という観点に立てば、ロマンポルノありき、であった。71年から始まり(『恍惚の朝』(加藤彰監督・71)は初期の一本、主演の中川梨絵はロマンポルノを代表する個性派女優となった)、ぼほ昭和とともに終焉を迎えたこの路線をほとんど見まくったせいか、女優は映画では脱ぐことが必然、との確信が強い私である。そんなロマンポルノが装いも新たに、今年作られた。『団地妻 昼下がりの情事』(中原俊監督)であり『後ろから前から』(増本庄一郎監督)である。往時のヒット作を彷彿とさせる題名だが、内容は時代とともに一新。映画の“空気”も製作過程も往時とは似て非なるもの、との意見もあろうが、私は面白く観て、応援したくなった。
前者では、もはや限界集落と化した、コンクリートの棺のようなニュータウンの一室のキッチンでそそくさと行われる刹那の営みに見入った。主演の高尾祥子がすでに死語となった“団地妻”を寂しげな裸体を奮わせて熱演。後者では、車内売春容疑で逃走する女性タクシー運転手の奔放な行状を描く風俗劇の中、エロチック・コメディエンヌの才能を発揮する宮内知美の爽快な脱ぎが清々しかった。
さて、今やエロスの休耕地化が著しい日本映画。その田畑を再び妖艶で肥沃なものとするには、もう一度“映画女優がエロスで魅せるのが当たり前”、デリカシーに欠ける言葉で敢えて言えば“脱いでナンボ”という環境整備が必要だろう。今回の邦画各社の作品群はその促進剤となる“大いなる遺産”である! (文=秋本鉄次)
メディア/品番:DVD BBBN-1016
発売日:2010.6.25
発売:日活 販売:ハピネット
税込価格:\3,990
本編尺:71分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタサイズ
音声:ステレオ
メディア/品番:DVD DABA-0532
発売日:2008.7.4
発売/販売:角川映画
税込価格:¥4,500
本編尺:76分
カラー/画面サイズ:カラー/スコープサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02060
発売日:2002.07.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:【期間限定プライス】¥3,150
本編尺:105分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV19248D
発売日:2002.07.21
発売/販売:東宝
税込価格:\4,725
本編尺:142分
カラー/画面サイズ:モノクロ/シネスコサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD BBBN-3001
発売日:2010.5.28
発売:日活 販売:ハピネット
税込価格:\3,990
本編尺:71分
カラー/画面サイズ:カラー/スコープサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0533
発売日:2008.7.4
発売/販売:角川映画
税込価格:¥4,500
本編尺:102分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD BBBN-1015
発売日:2010.5.28
発売:日活 販売:ハピネット
税込価格:\3,990
本編尺:75分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタサイズ
音声:ステレオ
由美かおる プレミアム・コレクション(2枚組) 「同棲時代」「しなの川」2作品収録
メディア/品番:DVD DA-0342
発売日:2004.05.25
発売/販売:松竹
税込価格:\7,980
本編尺:178分(2作品計)
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02058
発売日:2002.07.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:【期間限定プライス】¥3,150
本編尺:118分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0531
発売日:2008.7.4
発売/販売:角川映画
税込価格:¥4,500
本編尺:99分
カラー/画面サイズ:カラー/スコープサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV15322D
発売日:2005.10.28
発売/販売:東宝
税込価格:¥4,725
本編尺:120分
カラー/画面サイズ:モノクロ/シネスコサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02059
発売日:2002.07.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:【期間限定プライス】¥3,150
本編尺:98分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタサイズ
音声:モノラル