角川映画、松竹、東映、東宝、日活――5社の協力で贈る「日本映画DVDセレクション」。第8回目は日本映画史をDVDで振り返る企画第5弾として、「1954年」を特集しました。日本映画史に燦然と光輝く作品が数多く輩出され、日本映画界の隆盛期といえるこの年。各社からのDVD&ブルーレイのラインナップも充実し、家庭でこの日本映画黄金期の作品群を楽しむことができます。ぜひともこの特集から、映画製作にかける映画人たちの息吹を感じ取っていただければ幸いです。

日本映画史をおさらいしていく中で、1954年は絶対に見過ごすことができません。何よりもこの年は、黒澤明監督の『七人の侍』、そして本多猪四郎監督の『ゴジラ』と、世界にその名を轟かす東宝のモンスター級の名作が登場しています。この2作、内容的には今さら説明する必要もないでしょうが、共に現在ブルーレイ化がされていて、見事なまでに鮮やかな高画質の映像を楽しむことができます。

加えて、戦時中より黒澤監督のライバルと目された松竹の木下惠介監督は『二十四の瞳』を発表し、キネマ旬報ベスト・ワンに輝きました(こちらも撮影監督の故・楠田浩之監修によるデジタル・リマスター版DVDがリリース!)。木下監督はこの年のベスト・テンに、もう1本『女の園』が入っており、その実力を大いにうかがわせていますが、実は成瀬巳喜男監督も『山の音』『晩菊』が、溝口健二監督も『山椒大夫』『近松物語』がベスト・テン入りをしています。何とも豪華なキネ旬ベスト・テン1954!
海外映画祭などにおける実績を見渡しても、衣笠貞之助監督の総天然色(カラー)映画『地獄門』(53)がこの年のカンヌ国際映画祭グランプリをはじめアカデミー賞衣裳デザイン賞&名誉賞(現在の外国語映画賞)を、新藤兼人監督作品『原爆の子』(52)がチェコのカルロビ・バリ映画祭で平和賞および英国アカデミー賞国連賞を受賞。カルロビ・バリでは山村総監督の『蟹工船』(53)も特別賞を受賞しています。ベルリン国際映画祭では黒澤作品『生きる』(52)が3位に入賞、ヴェネチア国際映画祭では『山椒大夫』『七人の侍』が共にサン・マルコ銀獅子賞にそれぞれ輝きました。
そして稲垣浩監督による総天然色時代劇3部作の第1弾『宮本武蔵』は、翌55年度のアカデミー賞名誉賞を受賞しています。その他にも、この年は5月に東京で第1回東南アジア映画祭が開催されるなど、日本映画が国際的交流を含めて大いに飛躍しています。
またこの年は、2月にハリウッド女優マリリン・モンローが大リーガー選手ジョー・ディマジオとの新婚旅行の途中で、日本に立ち寄ったことも大きな話題に。「寝るときに身にまとう衣裳は?」と質問する記者に対する彼女の答え「シャネルの5番」も、大いに世間をにぎわせました。『ローマの休日』(53)が公開されたのもこの年で、以後オードリー・ヘプバーン旋風も日本中に吹き荒れました。


東映では中村錦之助や東千代之介ら若手スターが入社し、彼らを主演に起用した萩原遼監督の『新諸国物語 笛吹童子』や『紅孔雀』などの時代劇シリーズが爆発的大ヒット。それまでの新興映画会社から一転し、時代劇王国としての地盤を強固なものとしていきます。
大映もまたこの年、勝新太郎と市川雷蔵という後の二大スターが田坂勝彦監督の『花の白虎隊』で共演し、映画デビュー。この作品こそが大映名物“カツライス”の始まりでした。
松竹も大曾根辰夫(後の辰保)監督の『忠臣蔵』を打ち出します。これは戦後初めて“忠臣蔵”のタイトルを冠したおよそ4時間の超大作でしたが、まもなくして全長版のプリントが失われてしまい、DVDも3時間強のものがリリースされています。
こうして見ると、1954年こそは東宝の『宮本武蔵』『七人の侍』も含め、時代劇が日本映画黄金時代の象徴ともなる先駆けであったことを認めざるを得ません。
その一方、時代劇だけでなく、松竹の野村芳太郎監督、美空ひばり主演の『伊豆の踊子』(原作:川端康成)や、谷口千吉監督『潮騒』(原作:三島由紀夫)などの文芸映画も盛んに作られています。これらの原作は後にアイドルを主演映画に起用する際の定番的題材としてもおなじみの存在となっていきます。
その他、下山事件を題材にした山村総監督『黒い潮』(原作:井上靖)、山本薩夫監督『太陽のない街』(原作:徳永直)、吉村公三郎監督『足摺岬』(原作:田宮虎彦)、五所平之助監督『大阪の宿』(原作:水上滝太郎)などもそれぞれ高い評価を得ました。オリジナル脚本の市川崑監督『億万長者』や小林正樹監督『この広い空のどこかに』なども同様に、この年を語る上で外せない作品でしょう。
さて、この年から製作を再開した日活の第1回作品も、滝沢英輔監督の時代劇『国定忠治』でした。ただし、このときに同社が多くのスタッフや俳優たちを他社から引き抜いたことが問題となり、松竹・東宝・新東宝・大映・東映の五社は引き抜き防止のための協定を作ります。この“五社協定”は、後に映画人の自由を奪う足枷ともなっていきます。やはり光ある話題の奥には影も存在してしまうようです。

実は社会を揺るがす事件も多い年でした。3月、ビキニで水爆実験が行われ、偶然居合わせた第五福竜丸の船員たちが被曝。この事件は新藤兼人監督が59年に『第五福竜丸』として映画化しています。7月には陸海空と自衛隊が発足し、防衛庁が総理府の外局として設置されました。『七人の侍』が公開時にベスト・ワンにならなかったのは、農民たちが自衛のため侍を雇うという内容と、日本の再軍備を重ね合わせる過剰な批判があったからとも言われています。9月には青函連絡船洞爺丸が遭難。この事件をモチーフに水上勉は『飢餓海峡』を記し、65年に内田吐夢監督が映画化しました。
その他にも正月の皇居一般参賀者たちが殺到するあまり折り重なって倒れ、下敷きになった16人が死亡、60人が重軽傷を負った二重橋事件も起きています。52年に時の吉田茂首相の圧力によって打ち切りとなったNHKの社会風刺ラジオ番組『日曜娯楽版』の後番組『ユーモア劇場』も、吉田首相の再度の圧力とNHK幹部の自主規制で打ち切りになるなど、実は体制による言論の統制も依然として行われていたのです。(文=増當竜也)
メディア/品番:DVD DA-1602
発売日:2007.05.25
発売/販売:松竹
税込価格:\3,990
本編尺:98分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DA-0997
発売日:2006.06.24
発売/販売:松竹
税込価格:¥3,990
本編尺:141分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:Blu-ray TBR19160D
発売/販売:東宝
税込価格:\5,985
本編尺:97分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:①モノラル(リニアPCM)②ME(BGM+効果音)(リニアPCM)③オーディオコメンタリー
メディア/品番:DVD DABA-0544
発売:角川映画
税込価格:\4,725
本編尺:124分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
■第15回ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞 受賞作品!厳しくも哀しい人間愛をテーマに、巨匠・溝口健二が重厚な演出で描く最高傑作!
メディア/品番:Blu-ray TBR19221D
発売/販売:東宝
税込価格:\4,935
本編尺:207分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:①モノラル(リニアPCM)②ドルビーサラウンド(91年版/リニアPCM)③5.1ch Remix(ドルビーTrueHD)
メディア/品番:DVD DSTD06831
発売日:2004.10.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:¥4,725
本編尺:145分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD06832
発売日:2004.10.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:\4,725
本編尺:166分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02348
発売日:2004.10.21
発売:東映ビデオ/販売:東映
税込価格:¥4,725
本編尺:114分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DB-0097
発売日:2007.06.27
発売/販売:松竹
税込価格:\3,990
本編尺:156分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0667
発売/販売:角川映画
税込価格:\4,725
本編尺:91分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダードサイズ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV15347D
発売/販売:東宝
税込価格:\14,175
本編尺:301分
カラー/画面サイズ:カラー/スタンダードサイズ
音声:モノラル