
角川映画、松竹、東映、東宝、日活――5社の協力で贈る「日本映画DVDセレクション」。第10回目は日本映画史をDVDで振り返る企画として、「1969年」を特集しました。この年の日本映画界は黄金時代から斜陽の時期を迎え、映画業界全体に陰りが見え始めた頃。そんな中、今なおカルト的に人気の高い作品や、特撮・アニメファン垂涎の作品、華やかなスターが製作を手がけた大作、国民的映画などなど、この年の作品群は映画ファンにとって食指の動くものが多く、DVDのラインナップも充実しています。この特集から当時の日本の社会状況を知り、作品への興味を深めていただければ幸いです。

1969年7月17日、大映の市川雷蔵が直腸がんのため、『博徒一代 血祭り不動』を遺作に、37歳で死去しました。大スターのあまりにも早すぎる死は、日本映画黄金時代からわずか10年にして斜陽の時期を迎え始めていた日本映画界に、さらなる衝撃を与えました。
社会的にも、東大安田講堂占拠や新宿西口フォークゲリラ、10月21日国際反戦デーの大検挙など、体制に反発する若者たちの学生運動が過熱化。海外でもヴェトナム反戦デモが世界的規模に広がっていきます。またロマン・ポランスキー監督夫人でもあった女優のシャロン・テートが惨殺された事件は、映画史的のみならず世間に暗い影を落としました。

そんな暗欝で過激な時代背景の下、東映は『昭和残侠伝 唐獅子仁義』『緋牡丹博徒 花札勝負』『日本侠客伝 花と竜』『新網走番外地 流人岬の血斗』などの任侠シリーズや『不良番長 猪の鹿お蝶』といった不良性感度の高いアクションシリーズ、さらには石井輝男監督による『異常性愛記録ハレンチ』『徳川いれずみ師責め地獄』『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』といった猟奇性愛映画群を主体としていきます。こうした暴力とエロスの世界は当時の良識派からエロ・グロ・ナンセンスと非難されつつも、時代の気運とマッチし、今なおカルト映画として若者たちの評判を呼び続けています。
“光と影の映像美”で知られる大映も、この時期は猟奇色の強い作品が目立ってきますが、その中で増村保造監督による江戸川乱歩原作のミステリ『盲獣』のような秀作も誕生しています。もっともこの時期大映は経営的に火の車で、『ガメラ対大悪獣ギロン』のような怪獣映画も特撮シーンに予算をかける余裕すらなく、その同時上映の『東海道お化け道中』のような怪談映画も、それでも観客を楽しませようと苦心の跡がうかがえます。どのような状況の中でも観客に対するサービスを怠るまいとする“カツドウヤ”としての姿勢には敬意を表したいところです。
経営悪化は日活も同様で、かつての若手青春スターの高齢化や無国籍アクション路線の手詰まり感などもあり、任侠色の強いものや、舟木一夫主演『青春の鐘』のような歌謡青春映画が俄然増えていきます。なお、この後70年に日活と大映は提携し、協同配給会社ダイニチ映配を発足させるも現状の打破には至らず、大映は71年に倒産、日活はロマンポルノへと方向転換。その後、日活はこの方向転換によって時代の機運にのった作品を連打し若者たちの厚い支持を獲得、ひいては今の日本映画界に欠かせない才能を多数輩出することになります。

明るい話題にも目を向けてみましょう。1969年はアポロ11号のアームストロング船長などによる人類初の月面着陸がなされた記念すべき年ですが、そんな華やかな話題に呼応するかのように日本映画界ではスター・プロダクション製作の大作映画が軒並み大ヒットしています。三船敏郎主宰の三船プロ製作のスペクタクル時代劇『風林火山』もその1本。その前後にも三船プロは『赤毛』『新撰組』と時代劇大作を世に放ち、時代劇および日本映画の復興に力を注ぎ続けていきます。
石原裕次郎主宰の石原プロ作品『栄光への5000キロ』はその年の興行成績第1位に(残念ながら本作を含む石原プロ作品は、未だに何もDVD化されていないのは残念な限りです)。また『超高層のあけぼの』のようなスポンサード映画や、それらと真逆な『橋のない川』『若者はゆく~続若者たち』などの独立プロ作品もクリーンヒットを連発しています。キネマ旬報ベスト・ワンに輝いた篠田正浩監督の『心中天網島』も表現社=ATG製作、独立プロ作品でした。

大映は東映出身の時代劇スター中村錦之助を招いて三隅研次監督のメガホンで『尻啖え孫市』を世に放ちますが、これが同社最後の時代劇大作となりました。日活は舛田利雄監督の『嵐の勇者たち』が石原裕次郎をはじめとする日活オールスター映画として公開されました。
東宝オールスター・キャストによる丸山誠治監督の戦争“8・15”超大作『日本海大海戦』は、特撮の神様とも謳われた円谷英二による特技監督としての最後の仕事となりました。また、その直前に彼が特撮を担当した本多猪四郎監督の『緯度0大作戦』はジョセフ・コットンやリチャード・ジェッカル、シーザー・ロメロなどハリウッド・スターを招いて作られたSF日米合作。DVD時代の到来でようやく複雑な権利関係などがクリアとなり、ソフト化が叶った特撮ファン垂涎の作品でもありました。

さて、こうした国内外の光と影の双方を大らかな笑いと慈悲で包みこむ作品=山田洋次監督の『男はつらいよ』が、この年に登場しています。渥美清扮するフーテンの寅さんが巻き起こす笑いと涙の数々は瞬く間に日本中の映画ファンを魅了し、即シリーズ化が決定、同年『続・男はつらいよ』も公開されます。最終的にはおよそ四半世紀にわたる48作の長寿シリーズとなったわけですが、それは日本映画界の新たなる方向性の萌芽だったのかもしれません。
余談ですが、『男はつらいよ』の前に山田監督が手掛けた『喜劇一発大必勝』主演のハナ肇がTVヴァラエティ番組『巨泉×前武ゲバゲバ90分』の中で叫んだ「あっと驚くタメゴロー!」は、この年の流行語となっています。またこの年、さいとうたかをの劇画『ゴルゴ13』が「ビッグコミック」誌で連載が開始され(73年と77年に東映で実写映画化。その後アニメ化もなされています)、TVでは今なお続く長寿人気時代劇シリーズ『水戸黄門』第1シリーズが始まっています(こちらも78年に東映で劇場用映画が製作)。
『男はつらいよ』はもともとフジテレビで放映された人気TVドラマの映画化ですが、そのフジテレビが『御用金』(東京映画提携)と『人斬り』(勝プロ提携)、共にオールスター・キャストの時代劇大作で映画界に初参入したのもこの年でした。今やTV局なしには成立しえない日本映画界ですが、その流れは1969年から始まっていたのかもしれません。(文=増當竜也)
メディア/品番:DVD DVN-161
発売日:2007.07.06
発売:日活 販売:ハピネット
税込価格:\4,935
本編尺:99分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DB-0501
発売日:2008.08.27
発売/販売:松竹
税込価格:\3,990
本編尺:91分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DB-0501
発売日:2010.06.21
発売:東映ビデオ 販売:東映
税込価格:\4,725
本編尺:87分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DVN-153
発売日:2007.05.03
発売:日活 販売:ハピネット
税込価格:\4,935
本編尺:83分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DB-0502
発売日:2008.08.27
発売:日活 販売:ハピネット
税込価格:\3,990
本編尺:93分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0182
発売日:2005.07.29
発売/販売:角川映画
税込価格:\4,935
本編尺:78分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02105
発売日:2002.07.21
発売:東映ビデオ 販売:東映
税込価格:\4,935
本編尺:80分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV17329D
発売日:2007.12.21
発売/販売:東宝
税込価格:\4,725
本編尺:128分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02582
発売日:2010.06.01
発売:東映ビデオ 販売:東映
税込価格::【期間限定プライス】\3,150
本編尺:111分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DABA-0670
発売日:2009.12.25
発売/販売:角川映画
税込価格::\4,725
本編尺:90分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV3264D
発売日:2004.12.23
発売/販売:東宝
税込価格::\4,725
本編尺:165分
カラー/画面サイズ:カラー/シネスコ
音声:モノラル