2011.12.14
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角川映画、松竹、東映、東宝、日活――5社の協力で贈る「日本映画DVDセレクション」。第16回は今秋から冬にかけて公開が相次ぐ時代劇に注目、なかでもNHK大河ドラマ『龍馬伝』などで幕末人気が高まっていることから、「幕末時代劇」を企画しました。日本映画史を振り返ってみても、これまで「幕末」を舞台にした映画は数多く作られています。そこで、時代劇に造詣の深い映画ライター、金澤誠さんに、人気の高い新撰組や坂本龍馬をはじめとする幕末映画についてご紹介いただきました。DVDで発売されている作品も多いだけに、本サイトでご紹介している作品から、幕末が持つ時代の躍動感を感じていただければ幸いです。


東映では片岡千恵蔵の近藤勇で『新選組鬼隊長』(河野寿一監督・54)、『新選組』(佐々木康監督・58)、『壮烈新選組 幕末の動乱』(佐々木康監督・60)と新選組映画を連発。千恵蔵の近藤は決断力を持った頼れるリーダーで、そのキャラクター造型には高度成長期に入った日本の、会社の社長を重ねることが出来る。つまり新撰組は近藤の単一キャラクター映画ではなく、組織論的な作品へとシフトしていったのだ。

60年代に入り、そういう組織の実質的な運営者として№2の土方歳三が注目を浴びる。脱退者を許さず新撰組を鉄の掟によってまとめ、隊士から“鬼の土方”と呼ばれた彼の苦悩は、65年から始まった東映のTV『新選組血風録』(全26話)で克明に描かれた。ここで土方を演じた栗塚旭は今に至るも“土方役者”の極めつけと言われる。その余勢を買って彼は、松竹映画『燃えよ剣』(市村泰一監督・66)でも土方に扮した。
もう一人、『新選組血風録』では島田順司演じる沖田総司にも人気が集まった。その前から沖田は新撰組ものに登場していたが、不治の病を持つ薄幸の美剣士というイメージが強まったのは彼の登場以降のことである。沖田はやがて女性ファンをもつ時代劇キャラクターとして確立され、74年の東宝映画『沖田総司』(出目昌伸監督)では、当時モデル出身俳優として人気を得ていた草刈正雄が、現代青年に近い沖田を爽やかに演じた。
その中でも異色なのが91年の角川映画『幕末純情伝』(薬師寺光幸監督)。つかこうへいの戯曲を映画化したこの作品は沖田総司が女性だったという奇抜な発想で、牧瀬里穂扮する沖田が渡辺謙演じる坂本龍馬に惚れられるという、ラブコメディ時代劇になっていた。
近藤、土方、沖田をメインとした新撰組映画の集大成といえるのが、70年の三船プロ制作、東宝配給の『新選組』(沢島忠監督)。三船敏郎演じる近藤勇はいささか立派過ぎるが、オールスターキャストでお馴染みのエピソードをちりばめ、新撰組の誕生から崩壊までを俯瞰的に描く大作になっていた。
もう一人の幕末スター、坂本龍馬が注目を集めたのは、司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』が発表されてからだろう。坂本龍馬の生涯を青春小説として描いたこの小説の登場によって、龍馬は一躍歴史的偉人の上位にランクされる人気者になった。この原作は北大路欣也が主演した68年のNHK大河ドラマをはじめ、何度もTVドラマ化されたが、龍馬をメインとした映画は意外と少ない。それは司馬遼太郎の原作が完結したのが66年で、当時の映画界では時代劇ブームが完全に去っていた情況が影響している。
そういう中でも、坂本龍馬が暗殺されるまでの数日間に焦点を当てた黒木和雄監督の『竜馬暗殺』(74)や、龍馬に心酔する武田鉄矢が脚本、主演を兼ねて、幕府軍15万人に4千の兵力で長州藩の高杉晋作とともに立ち向かう龍馬の勇姿を映し出した『幕末青春グラフィティ Ronin坂本竜馬』(河合義隆監督・86)などが作られた。ただしこれらは坂本龍馬のある時期を点描した、青春映画の色合いが強い。
そういう意味では彼の半生を俯瞰的に見つめた龍馬映画の代表作は、中村錦之助(萬屋錦之介)が自らのプロダクション制作(配給は東宝)で主演した、70年の『幕末』(伊藤大輔監督)だろう。ただこれは伊藤監督が『竜馬がゆく』を戯曲化したものを原作にしていて、演出にも随所に舞台的な処理が見られる。ひとつの映画として龍馬の全体像に迫った、龍馬映画の極めつけはいまだ登場していないと言えるのだ。


新撰組や坂本龍馬以外の幕末ものでは、岡本喜八監督が郡司次郎正の小説『侍ニッポン』を原作に、大老・井伊直弼の息子が父を暗殺する桜田門外ノ変に関わることになる三船プロ=東宝の『侍』(65)、駿河の国を舞台にジャズの音楽に魅せられた藩主がジャムセッションをしているうちに、時代が幕末から明治へと移り変わっていく大映の『ジャズ大名』(86)などを発表している。落語を題材にした川島雄三監督の日活映画『幕末太陽傳』(57)もまた、時代設定は幕末。主人公は金がなくて品川の遊廓へ居残ることになったフランキー堺演じる町人の佐平次だが、石原裕次郎扮する高杉晋作をはじめ、遊廓の客となる勤皇の志士たちが彼と絡んでいく。その群像劇としての面白さ、バイタリティー溢れる人間像には、幕末がもつ時代の躍動感が見事に掬い取られている。これもまた幕末期を描いた映画の中で外せない傑作であろう。 (文=金澤誠)
メディア/品番:DVD DABA-0508
発売日:2008.02.22
発売/販売:角川
税込価格:\3,990
本編尺:85分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD06651
発売日:2004.07.21
発売:東映ビデオ 販売:東映
税込価格:\3,990
本編尺:104分
カラー/画面サイズ:カラー/スタンダード
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02349
発売日:2004.10.21
発売:東映ビデオ 販売:東映
税込価格:\4,725
本編尺:101分
カラー/画面サイズ:カラー/スコープ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DVN-99
発売日:2005.01.01
発売:日活/販売:ハピネット
税込価格:\4,935
本編尺:92分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダード
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DSTD02351
発売日:2004.10.21
発売:東映ビデオ 販売:東映
税込価格:\4,725
本編尺:99分
カラー/画面サイズ:カラー/スコープ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD TDV20487D
発売日:2010.12.23
発売/販売:東宝
税込価格:\4,725
本編尺:116分
カラー/画面サイズ:カラー/ビスタ
音声:モノラル
メディア/品番:DVD DVNS−5
発売日:2005.09.01
発売:日活/販売:ハピネット
税込価格:\6,300
本編尺:110分
カラー/画面サイズ:モノクロ/スタンダード
音声:モノラル