2011.12.14
東映創立60周年記念大特集 私の東映映画オールタイム2011.12.1
12月の2011.11.28
9月、10月の2011.11.18
「1月の新譜情報」2011.11.8
「12月の新譜情報」2011.9.26
「10月、11月の新譜情報」 9月、10月のランキング募集 「東映映画ベスト10」2011.8.10

リストアップされたものの中から3つ選び、その作品についての“思い”も
ひと言添えて投票してください。もちろん、リストアップされていないものから選んでいただいてもかまいません。結果は1カ月後、ランキング形式にて発表いたします。
第1回目の応募期間は4月25日~5月15日。投票された皆様の中から、毎月抽選で新譜DVDをプレゼントさせていただきます。ふるってご参加ください。なお、当選者の発表はご本人様へのメール配信にてかえさせていただきます。
被災された方々の状況を考えると、まだまだそんな時期ではないとの思いもありますが、1日も早い被災地の復興と平常の日本に戻ることを願い、今回、あえて“元気になる映画”をテーマに選びました。嫌なことを忘れさせてくれるコメディ、夢と希望を抱けるドラマ、元気だったころを思い出させてくれる青春映画などなど、思わずエネルギーが沸いてくるお勧めの映画を選んでください。
参考までに映画評論家の樋口尚文さんのベスト・ムービーをご紹介。皆様の熱いメッセージ、選評もお待ちしております。

総理が「未曾有の国難」と深刻に会見する映像を見て、『日本沈没』(73)の丹波哲郎の台詞そのままだと驚いたり、爆発した原発から漏れた放射能が汚染物質に着色するという報道を聞いて、驚くほど同設定の黒澤明『夢』(90)“赤富士”の「死神に名刺もらったってしかたがない」という井川比佐志の台詞を大いなる共感ととも聞くことになろうとは、文字通り夢にも思わなかった。『生きものの記録』(55)の、放射能が怖くて地球の裏側まで逃げようとするという黒澤映画の中で最も感情移入が至難だった主人公が、今や最も理解できる存在になってしまった。こんなご時世、とてもむりやり明るくなんてできないが、しかし逆に過度な自粛に走ったり、少々はめを外したら「不謹慎」だとつつかれるようなムードもごかんべん願いたい。

そんな今、元気になる映画として選んだのは、大いにポジティブで「不謹慎」の香りのするだ3本だ。①の『鴛鴦歌合戦』は戦前の、日本が暗く重苦しい時代に突入するのを軽快に吹っ飛ばすような、マキノ正博の即製オペレッタ映画だ。『ジャズ大名』(86)の約半世紀前に、ジャズに踊り狂う江戸の人々! このノーテンキでしゃれっ気たっぷりの無責任さには心躍る。

②の『ゴキブリ刑事』(73)は、本来なら「寅さん」や「トラック野郎」といったプログラム・ピクチャーの顔を選びたかったが、もっと「不謹慎」なキャラクターに代表させた。渡哲也扮する刑事のはちゃめちゃにパワフルで破天荒な捜査の連続に、元気をかき立てられない観客はいないだろう。
そして③の『日本春歌考』(67)はシュールな学園紛争映画だが、とにかく荒木一郎ら高校生グループが♪ひとつ出たホイの~と春歌を唄って腐った旧世代を吹き飛ばすアナーキーさに痺れる!彼らの「不謹慎」のきわみである前向きさは、けだし今のご時世貴重なものだ。
時代劇5作品『十三人の刺客』『桜田門外ノ変』『雷桜』『武士の家計簿』『最後の忠臣蔵』のDVDリリースにあわせ、W杯日本代表の岡田武史前監督を応援団長に迎えた「サムライシネマDVDキャンペーン」が実施中。そこで、もうひとつのテーマには、日本が誇る“サムライ映画”を。魅せる殺陣、日本の美徳・大和魂がちりばめられたドラマなど、皆様の心に触れる最強のサムライ映画を選んでください。
最強のサムライ映画というと、普通なら黒澤明『七人の侍』(54)『用心棒』(61)『椿三十郎』(62)や内田吐夢『宮本武蔵 一乗寺の決斗』(64)や工藤栄一『十三人の刺客』(63)『大殺陣』(64)みたいな映画を挙げるのだろうけれども(そしてそういう映画は滅法面白いけれども)、どうしてもただの剣豪というのは面白くなくて、ずっこけたアンチヒーロー剣豪というのに惹かれる。

①『丹下左膳餘話 百萬両の壺』(35)は実はサムライ映画の枠を超えて、私のオールタイム日本映画ベスト・テンでここ四半世紀ベスト・ワンの座を譲らない傑作。大河内傳次郎の怪人的ずっこけ剣士の子どもに寄せる情愛をテンポよく機知に富んだ語りで描き、実にさまざまなものが詰めこまれたモダン時代劇。

②『薄桜記』(59)の善意の侍・市川雷蔵が不運にも処世の道を踏み外した後のずっこけぶり、その傷ましさには言葉を失うが、そのずっこけを引き受けた動機たる秘めし妻への純愛にほとほと泣かされる。そういえば、同じような愛に殉死するずっこけ男女を描いた『武士道無残』(60)も心に残る。

③『ポルノ時代劇 忘八武士道』(73)のアナーキーの極とも言うべきナンセンス剣豪・明日死能は丹波哲郎の懐の深さを伺わす陰の当たり役。彼を献身的に助けるひし美ゆり子の妖艶美も見逃せない(5月下旬にひし美さんとの共著『万華鏡の女 女優ひし美ゆり子』が筑摩書房から出ます……やにわにセンデンですみません)。
アンチヒーローのたむろする異色時代劇といえば、『天草四郎時貞』(62)『切腹』(62)『いのちぼうにふろう』(71)などシンコクなものが多いですが、『ひとごろし』(76)『初笑い びっくり武士道」(72・原作は同じ)の松田優作、萩本欽一のような臆病サムライや、『沓掛時次郎 遊侠一匹』(66)『関の弥太っぺ』(63)の中村錦之助扮する人情にがんじがらめの侠客などにこそ、「技」ではなく「人」としての最強感を見ます。
ひぐち・なおふみ/1962年生まれ。83年、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)に入選。 一方で映画論も執筆し、ダゲレオ映像評論賞入賞。現在は、クリエイティブ・ディレクターとして多くのTVCMを企画する。著書は『大島渚のすべて』(キネマ旬報社刊)『ロマンポルノと実録やくざ映画 禁じられた70年代日本映画』(平凡社新書)など多数。